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電子構造研究系 分子研リポート2005 | 分子科学研究所

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4.点検評価と課題

4-1 電子構造研究系

国内評価委員会開催日:平成17年12月28日 委 員 山内  薫 (東大院理,教授)

福村 裕史 (東北大院理,教授) 西  信之 (分子研,教授) 大森 賢治 (分子研,教授) 大島 康裕 (分子研,教授) オブザーバ 中村 宏樹 (分子研,所長) 国外評価委員面接日:平成18年3月6日∼7日

委 員 A . W elford C astleman, J r.(Professor, Pennsylvania S tate University)

4-1-1 点検評価国内委員会の報告

電子構造研究系の構成員は,現在,基礎電子化学研究部門に西 信之教授,電子状態動力学研究部門に大森賢治教授, 大島康裕教授の3名である。この3名に対して,国内委員2名と外国人評価委員1名が系の評価にあたった。

所外委員との全体討論

所   長:19年度からを目途とした分子研の組織再編を考えている。全体を4領域に大きく分け,各領域に施設を 割り振るような組織となるだろう。現在,43研究グループがあるが,この規模をグループ数で保つか,グ ループ内の構成を少し増やし,グループ数を減らすかを考慮中である。分子研としては,現在は,大学 から大学院生が入りにくい状況にあると判断している。外国からの人材の導入も含めて検討すべきであ ろう。

所外委員A:今日の報告では,3名の教授から大変レベルの高い話を聞くことができた。西教授の研究の内容は予想 を超えていた。まとまった話を聞くと,思想や流れがよくわかる。大森教授の内容は,大変ファインな 研究であり,量子情報の制御,干渉など大変面白い内容を含んでいる。ここまで判っており,ここが大 事である,ここが面白いということを更にアピールする工夫がもっと必要であろう。固体の系に入るの も面白いが。困難な問題もあるだろう。大島教授の研究は,高分解能分光と超高速レーザーを組み合わ せた興味深いものである。東北大学の三上研究室の研究内容と大変似ているという印象を持った。知の 最前線で新しい研究分野を開拓するという認識を更に強めてもらいたい。分子間ポテンシャル等を正確 に求めることは重要であり,溶液等の研究にも広まるだろう。

所外委員B:西教授の研究は,新しい材料を提供するのではと期待される。大森教授は若手のホープであり,干渉効 果をうまく使った独創的な研究を行っている。気体のみならず,固体のパラ水素の研究は面白い。量子 力学の基礎となることに,観測の問題を取り入れて考えている。大島教授は,量子状態の分布として回 転の問題を捉えている。分光学としては古い問題と思われやすいので,波及効果を考えて訴える必要が あるのではないか。分子間ポテンシャルの決定という仕事に多くの人への説得力を増す努力をされる必 要があるだろう。全体的に,大変高いレベルの仕事が行われているという印象を持った。

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282 点検評価と課題

今回の評価は研究内容についての評価が主体であり,組織等に関しては現在再編作業が進行中であることと,その 中で電子構造研究系が物質科学系と光分子科学系の2領域に別れることに関しても,所内所外の各委員の納得が得ら れた。以下に所外委員からの評価文を載せる。

4-1-2 国内委員の意見書

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 委員 A 電子構造研究系に所属する西グループ,大森グループ,大島グループの研究活動は,総体として極めて高いレベル にあると評価できる。以下,項目別に評価結果を示す。

研究分野における役割と位置付け

分子科学研究所の役割は分子科学の分野において世界を先導する研究を行い,国際社会に向けて成果を発信し,人 類の知の地平を拡げて文化的貢献を行うことと考えられる。電子構造研究分野においては,これまで良く知られてい る分子系については,その基礎的知見は十分に明らかにされており,新しい物質系の探索とその物性の解明へと研究 の方向は進みつつある。西グループの研究の一部である炭素−金属ハイブリッドナノ構造体の研究はこのような方向 性を持ったものと位置づけることができる。一方,簡単な分子系を用いる場合には,現象自体が未解明の問題に挑む ことになる。大森グループと大島グループの取組んでいる可干渉フェムト秒パルス光による分子の電子状態と振動状 態の位相制御は,このような方向性を持ったものとして位置づけることができる。いずれの方向においても,これら のグループの目指しているものは世界を先導する成果につながっている。

研究内容と研究者の評価

西グループの研究において特筆すべきは,金属と炭素を含む新しい構造を有する物質系の開拓である。特にナノ物 質の磁性は大変ホットな分野であり,世界的にも注目を集めうる成果と考えられる。透過型電子顕微鏡などの分析機 器を用いて行う研究スタイルは物質科学の方向に少し傾き過ぎているかもしれないが,電子構造研究の視点は一貫し ており,今後も確実な発展が期待できる。このグループは同時に,液体中における局所クラスター構造についても非 常に基礎的な研究を行ってきており,従来の教科書を書きかえるほどの成果をあげつつある。研究レベルは極めて高 い。

大森グループは,東北大学で行っていた研究をさらに精緻に行える実験系を組上げ,フェムト秒光位相制御の実験 的な極限にまで辿りついている。その研究成果は,Science 誌および Phys. Rev. Lett. 誌に受理されており,分子線中の

分子波束の制御と観測の技術はまぎれも無く世界トップレベルにある。今後,固体を試料として研究を行うという方 向には幾多の困難が予想されるが,十分な実力があるものと期待できる。量子コンピューターへと発展させる試みは 興味深いが,用いる分子系の個性に応じた特徴が出せれば,電子構造研究の一分野として開花する可能性もある。但 し,「量子論の検証」というとき,その目指すところをわかりやすく説明する必要性が感じられた。

大島グループはスタートしてから間も無いが,干渉計測法あるいは時間分解蛍光ディップ法などを用いて分子の内 部回転波束を観測するなどの成果をあげつつある。ベンゼン−水のクラスターを用いた分子間相互作用ポテンシャル の精密測定なども一定の評価ができる。研究者のポテンシャルは十分に高く,研究を進めていけば新たな発展がある ものと期待される。但し,既におおまかに明らかになっていることをより細かく定量的にしていくという研究は,質 的発展を伴わないことが多いことを忘れないよう研究の方向を見守る必要があろう。現時点での評価は早すぎると判 断した。

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研究分野の重要度

量子力学は写真定着技術に支えられた分光学にその実験的手法の起源があり,熱力学も蒸気機関のエネルギー効率 の理解に源がある。新しい技術の誕生とともに物理化学は様相を変えてきた。技術は,ある時は研究対象そのもので あり,また研究手法の革新によって見えなかったものが見えてくるという貢献もある。フェムト秒レーザーを用いた 分子位相制御の研究はこの流れの中にあるものと考えられ,現代の電子構造研究の中で重要な要素技術のひとつであ ろう。新しいナノ材料の科学は,物質合成法自体が新しい技術を伴うものであり,電子構造研究の中で極めて重要な 分野である。

ここで,IS I W eb of K nowledge を用いた特定分野の論文数の年次変化を調べた結果を紹介する。題名,キーワード, あるいはアブストラクトにそれぞれの単語を含む論文数の変化は下図に示す通りである。“ C luster” などの単語は,遺 伝 子 , 天 文 な ど の 分 野 で も 使 わ れ て お り 注 意 深 く 排 除 し て あ る 。 興 味 深 い の は ,1991年 よ り2005年 ま で の 間 に , Molecular C luster,R aman S pectroscopy,F luorescence S pectroscopy,L aser C hemistry などの分野で論文数はおよそ3倍 に伸びている。一方,Molecular-B eam と Photochemistry & T riplet では,ほぼ横ばいである。「分子ビーム」の場合には 毎年2000編の論文が出版されていることから研究層の厚さが見てとれるが,新たな応用の方向が開けていないためか, 他の分野に比べて伸びが無い。「ラマン分光」や「蛍光分光」など,決して新しくない測定技術も「クラスター」や「レー ザー化学」と同様に伸びているのは,生物科学,材料科学への応用展開がなされているためではないだろうか。C 60 は 1993年にピークがあり衰退しているが,「単一分子」は急速に伸びている。ここには示さなかったが,「ナノ化学」も

「単一分子」と同様に20∼30倍の伸びである。以上のように,「クラスター」が重要な研究分野として伸びていくこと は十分に予想できる。一方,分子ビームとしての研究はタンパクや核酸などの生物試料を用いるなど,工夫が必要に なってくるであろう。

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284 点検評価と課題

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 委員B 全体について

西信之教授,大森賢治教授,大島康裕教授から構成される電子構造研究系の研究グループは,それぞれ極めて独創 性の高い研究を進めており,その研究は,質と量ともに世界をリードするものである。なかでも,西教授のグループ の炭素と金属のハイブリッドナノ構造体の形成に関する研究,大森教授のグループにおけるアト秒エンジニアリング の展開,大島教授のグループの分光学と超短パルスを組み合わせた新しい研究手法の開拓には感銘を受けた。

西教授のグループについて

西教授のグループでは,物質の混合と分離に関する基本的なテーマを一貫して取り扱い,その根源を明らかにすべ く研究を展開している。確固たるクラスター技術,分光技術,表面分析技術に裏打ちされた研究によって,新規物質 系である炭素−金属混合ナノ構造体を発見し,その構造変化過程を明らかにした点は顕著な業績である。

エタノールと水,酢酸と水の系において,局所構造と溶解過程の関係を質量分析法とラマン分光によって解明した 研究は,混合溶液系とはどのようなものであるかという基本にミクロスコピックな視点から明快な解釈を与えたもの である。また,これまで信じられてきた酢酸二量体の幾何学的構造が実は正しくなく,ノンサイクリック型であるこ とを突き止めたことは,全体の研究の流れから見れば枝葉の成果かも知れないが,溶液系のミクロスコピック構造に 関する先入観に警鐘を鳴らすものであり,基本的かつ重要な成果である。

F eC2を基本構成要素とするナノクラスターの研究では,イオン結晶が,電荷移行を経ると同時に構造変形を起こし, その結果,グラファイト状のカーボン原子によって鉄のクラスターが囲まれる構造をとるという新規な現象を発見し,

「炭素の皮に包まれた金属クラスター」という新物質システムの構築に成功した意義は大きい。この物質については, 大きな保持力が見出されるなど,新しい素材の開発につながる可能性がある。

また,クラスター構造を出発点としたレーザー励起や加熱により金極ナノフィルムや,炭素皮膜をもつナノワイヤー を生成させるなど,機能性物質の合成に混合クラスターの持つ特徴を最大限に生かしている。これらの独創的な研究 手法と成果は,これからの材料開発の先鞭であると同時に,物質創成に「混合系の自己組織化」を活用するという新 概念を導入したものであり高く評価されるべきものである。

大森教授のグループについて

大森教授のグループでは,独自に開発したアト秒位相変調器を用い,2つの超短パルスレーザーの相対位相をアト 秒の精度で制御することに成功したばかりか,それを用いて,分子内にコヒーレントな波束を用意し,アト秒精度で それを制御した。これは,時間分解能を極限まで高め,量子干渉を利用して分子の核間距離をオングストローム以下 の精度で制御したことに相当する。

大森教授は,その分子に書き込まれた量子位相を「情報」として意義づけ,気相の分子に量子情報を書き込むこと に成功した。そして,これに留まることなく,この量子干渉を,デコヒーレンス過程を追跡するために利用し,固体 パラ水素中における分子系のデコヒーレンスの研究を進めている。一連の仕事は,アト秒エンジニアリングという,分 子科学を基礎とする新しいエンジニアリングの分野を切り開くものであると同時に,量子力学の基礎や観測の問題に も関わるものであり,高く評価されるべきものである。そして,今後のさらなる展開が期待できる。

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大島教授のグループについて

大島教授のグループでは,フェムト秒レーザーと高分解能レーザーを組み合わせることにより,実時間領域の情報 と周波数領域の情報から分子のダイナミクスを理解するという独自のアプローチを展開している。大島グループは,平 成16年9月より発足した新しいグループであるが,すでに,分子研において新しい研究成果を挙げており,発足以来, 研究室の立ち上げに全力を尽くしてきたことがうかがわれる。

相対位相をランダムに変調したパルス対を用いる干渉計測により,分子内のメチル基の内部回転に関するダイナミ クスの情報を得るなど,興味深い結果が得られている。さらに,強光子場において分子が起こす非断熱過程を,その 固有状態の分布の変化として捉えた研究は,強レーザー場で分子がいかに回転励起されるかという基本問題に,分光 学の立場から明快な解答を与えるものであり,高く評価されるべき仕事である。

その他にも,原理的に新しい分光手法の開拓とともに分子のダイナミクスに関する理解を深める努力を進めており, 将来の新分野の開拓につながるものと,これからの発展が大いに期待される。

4-1-3 国外委員の評価

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 原文 Report on the Department of Electronic Structure following a visit to IMS on 6/7 March 2006

Dear Director General H. Nakamura:

It has been a distinct pleasure to meet with them on March 6th to 8th, 2006, and discuss the work of the professors who serve as group heads in the Electronic Structure Department of the IMS. The department continues to be staffed by world class researchers, and the Department Head and Institute Director are to be congratulated for their success in maintaining high standards in retaining faculty and also in attracting and hiring new ones. Two relatively new hires (Proferssors Ohmori and Ohshima) have allowed the programs of the department to be broadened by undertaking some exciting new directions, one which is focused on a combination of quantum control problems and also the test of concepts at the boundary of classical-quantum theory. Professor Ohmori’s recent accomplishments in the area of wave packet propagation, with two papers about to be published in PRL and Science, are especially noteworthy. These findings, including planned studies, are likely to have major impact on our fundamental understanding of ways to achieve quantum control, and also have the potential of providing answers to fundamental questions regarding the behavior of matter at the quantum level. Achievements in this area are likely to provide high visibility. Another new direction has been initiated in the department by Professor Ohshima, in the area of photochemistry. The novel concept is to employ wave packet control to influence molecular motion and hence chemical dynamics. Attaining the ability to photochemically effect molecular motions would be a major accomplishment and is a very promising avenue of research clearly worth pursuing. A second related activity involves determining intermolecular potentials, and a third, deducing the structure of clusters. The alignment of rotational states employing high intensity light fields is a promising area of endeavor as are studies to be devoted to obtaining the sensitivity needed for deducing structural properties of clusters through the use of STIRAP with high coherence allowing complete population transfer. Focusing on obtaining intermolecular potentials for a variety of molecular systems offers the promise of providing information that will be widely used by others who endeavor to calculate the structures of complex systems, especially those involving hydrogen bonding.

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286 点検評価と課題

The continuing and expanding effort of the Department Head’s own individual work is providing the basis for the cohesiveness of the program as it impacts on detailed understanding of phenomena and intermolecular interactions responsible for the properties of matter of nanoscale dimensions, including quantum effects and property changes with individual variations in the molecules/ atoms comprising selected mixed systems. This area is likely to give rise to the discovery of new phenomena, and with its focus on materials and nanoscale science, can serve to unify many of the objectives of research underway in the various departments at the IMS.

It has been interesting for me to follow one of the threads that permeates throughout the work of the Department Head that has served to bridge the gaseous and condensed state. Through comprehensive work on mixed systems, the scientific findings have provided the scientific community with insights of unprecedented detail concerning bonding and in some cases the existence of cluster aggregates that retain their structure in the condensed phase, and hence influence the properties of the bulk systems. Particularly enlightening in this regard are studies of hydrogen bonded mixed systems involving alcohols, and organic acids with water. The new fundamental studies have unified understandings derived from cluster science, structural considerations, spectroscopic studies and thermochemistry, and the breadth derived from these findings will provide insights of value in many areas including biochemistry where hydrogen bonding is central to behavior, and will pave the way for future studies on more biologically relevant molecules. Equally valuable are studies focused on “soft-hard” and “hard” systems that relate to other aspects of nanoscale science.

During the visit I was informed that consideration is being given to reorganizing the departmental structure of IMS to one that might have as its focus, “Regions,” perhaps with themes such as: Materials Molecular Science; Photo-molecular Science; Theoretical and Computational Molecular Science; and Bio and Coordination Compounds Molecular Science. This organizational structure would be in keeping with the current activities under way at IMS, and would alleviate the problems that presently exist where some departments are essentially sub-critical in size. In view of the broad interest throughout the world in the field of nanoscience, and the impressive center already existing at IMS, it will be necessary to retain such a unit title, even if the subject can be easily subsumed in the Region: Materials Molecular Science.

During the last day, an opportunity arose for me to tour the laboratories of six other professors, two of whom were available for discussions. Professor Kitagawa described a fascinating aspect of his research having to do with protein molecular recognition/ sensing of small (diatomic) molecules such as CO, NO and O2. Interesting discussions with Professor Matsumoto provided me the opportunity to learn about an important area of work pertaining to the photochemistry of adsorbates on metal surfaces which he is probing using ultrafast laser techniques. I was also very pleased to have had an opportunity to tour laboratories dealing with the interaction of light with gold nanoparticles, the synthesis of gold particles of specific atomic composition and the study of some of their reactive characteristics, a tour of the extremely impressive 920 MHz NMR facility, and one of the nanoscience laboratories where molecular systems are synthesized and subsequently characterized. Each of the research associates which gave me a tour of these other laboratories, did a splendid job in describing their work and its objectives. It is clear that IMS attracts outstanding individuals from many scientific fields as assistants, coworkers, and potential future leaders in science.

Another observation I wish to comment about concerns the facilities available at IMS for conducting forefront research, as well as the high quality research personnel who have such original and innovative ideas to pursue. These factors would seem to position IMS to be able to continue being one of the leaders in the world in conducting first class science. But this opportunity to stay at the fore is clearly going to be eroded by the budget situation, and concomitant understaffing. There is an urgent need to increase the number of both junior as well as senior scientists, as well as research associates and students. It is imperative that the government

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redress this intolerable situation, before the situation of the Institute becomes irreversible. Furthermore, while it is admirable for individuals to interact with industry, and also for the institute to pass on scientific and technological findings that will stimulate new developments and hence help the nation’s economy, first class science cannot be accomplished if the institute were to become an arm of industry, with the motivation for work prompted primarily by industry driven application based research. Care must be taken that such a situation does not arise.

As we both recognize, one of the greatest needs of IMS is to have more highly qualified personnel; especially significant would be the acquisition of a larger number of graduate students conducting their research under the direction of your scientific staff members. I was pleased to learn that the present situation of having too few students may be partially alleviated through a new JSPS program for students from Asian countries. It may be worthwhile acting on this opportunity immediately by encouraging some of your more articulate group leaders to travel to these countries and make contact with prospective candidates. They must be prepared to convey to them the exciting work in progress and the opportunities available for participating in science at the “cutting edge.” After a detailed personal conversation with prospective students, it should be possible to sort out the most promising qualified candidates.

Another problem you evidently face is similar to that in the US and elsewhere, namely too little interest in the field of science on the part of the upcoming generation of students. It may be worthwhile to initiate an “outreach program” in which again, your more articulate group leaders make visits to undergraduate colleges and advanced high schools throughout Japan, giving talks about their exciting work. Perhaps involving some of their teachers in research during school vacation periods might be useful as these faculty members could end up as valuable ambassadors between their schools and the IMS.

Finally, in response to your wish about possible future areas of research emphasis, in addition to the fields currently being pursued, I believe the areas of nanoscale materials involving: 1) laying the fundamental science for the design of new heterogeneous catalysts with selected reactivities; 2) and devising scientific concepts for the formation of materials with desired properties through cluster assembly, are both research areas worth pursuing.

I hope my observations and comments are of some value to you. I thank you and your scientific staff for the interesting, informative and friendly interactions during my visit. I look forward to my return visit as councilor in early winter/late fall. Best wishes for a successful new research year.

Sincerely,

A. WELFORD CASTLEMAN, JR.

Eberly Distinguished Chair in Science Evan Pugh Professor

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_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 訳文

親愛なる中村宏樹所長:

2006年3月6日から8日にかけて IMS の電子構造研究系の教授の皆様にお会いし,その仕事について議論できたこ とは格別の喜びです。この研究系は世界的なスタッフを揃えており,系の主幹および研究所所長はその高い水準の維 持に成功しこれからも優秀な新人を集めるであろうことを祝福します。二人の比較的新しい採用者(大森教授と大島 教授)は,研究系の計画がいくつかの刺激的な新しい方向を目指すことによって拡がりをもたらすことに貢献してい ます。その一つは,量子制御問題の組み合わせと古典−量子理論の境界における概念の検証に中心が置かれています。 大森教授の最近の業績,波束の伝搬という領域における業績は,PRL と Science 誌に出版されようとしていますが,十 分に価値の高いものでしょう。これらの発見は,計画的な研究の上に成り立っていますが,量子制御を実現する基本 的な理解の方法に大きなインパクトを与えそうであり,物質の振る舞いに関する量子論的なレベルでの基本的な問題 に解答を与える可能性が高いものです。この領域での彼の業績は高い注目を浴びるでしょう。もう一つの新しい方向 が,光化学の分野で大島教授によって開始されようとしています。彼の新しい概念は,分子の運動に影響を与える, 従って化学動力学に影響を与える波束の制御を取り入れています。分子の運動に光化学的な影響を与えうるというこ とは,大変期待できる研究の道であり明らかに実行する価値があると言えましょう。二番目の問題に関連する活動は, 分子間ポテンシャルの決定に関わるものであり,三番目のそれはクラスターの構造を演繹的に決める仕事でしょう。高 強 度 の 光 の 場 を 用 い た 回 転 状 態 の 整 列 と い う 問 題 は , 完 全 な 分 布 の 転 移 を 可 能 に す る 高 い コ ヒ ー レ ン ス を 持 っ た S T IR A Pを導入し,クラスターの構造的な特性を導き出すのに必要な検出感度を到達しようとする努力によって将来を 約束された領域となるでしょう。多様で多数の分子系に対して分子間ポテンシャルを得る事への集中的な努力は,特 に水素結合を含む複合体の構造の計算を行おうとする人々に広く情報を与えることは確実でしょう。

系の主幹自身の,継続的であり拡がりつつある仕事は,凝集現象という研究プログラムの基礎を与えつつあり,ナ ノスケールの次元での物質の性質を決める分子間の相互作用や現象の詳細な理解にインパクトを与えるものでしょう。 これは,選択された混合系をつくる分子/原子系における量子効果や個々の多様性を有する性質の変化を含んでいま す。この領域は,新しい現象の発見をもたらすでしょうし,物質科学やナノスケール科学に焦点を当てることによっ て IMS の多くの研究系で進行している研究の目的を融合させるでしょう。

私にとっては,系の主幹の,気相と固相とを繋げるであろう仕事を貫く研究の本筋に興味があります。混合系にお ける集中的な仕事を通して,その発見が科学者のコミュニティーに化学結合に関するこれまでになかった詳細な洞察 を与えるでしょう。ある場合には,凝縮相に於いてもその構造を保ったクラスターの集合体が存在し,物質の性質を 決めているわけです。特に,この意味で重要な仕事は,水とアルコール,あるいは水と有機酸類の混合系における水 素結合の役割の解明でしょう。この新しい基礎的な研究は,クラスター科学,構造解析,分光学的な追求,そして熱 力学的な考察などから導かれた理解を統一するものであり,これらの発見から導かれた広い視野は,生物化学の分野 を含む水素結合が中心的な振る舞いを果たしている多くの領域に価値ある識見を与えるでしょうし,より生物に関わ る分子系のこれからの研究への道を開いたと言えるでしょう。ナノスケール科学の他の見方に関連して,“ 柔らかい物 質−固い物質の混合系” そして“ 固い物質の混合系” に焦点をあてた研究も同様に価値のあるものでしょう。

私の訪問の間に,IMS の系の再編についての考えを聞かされました。“ 領域”おそらく,物質分子科学,光分子科学,

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理論・計算分子科学,そして生物・錯体分子科学のようなテーマに焦点が絞られているのでしょう。この再編は,現 在の IMS の活動状況に応じたものでしょうし,現在の編成の下で幾つかの系の単独の存在が抱える問題を軽減するで しょう。また,それはすでに IMS が有する印象的なセンターではあるのですが,ナノ科学の分野で世界的な広い興味 という視野から見た場合,たとえこの課題が容易に包括されうるものであっても,物質分子科学という領域名を保有 することは必要なことでしょう。

昨日,6名の他の系の教授の研究室を訪問する機会を持ちました。その内の2名の教授とのディスカッションが持 てました。北川教授は,C O,NO,及び O2のような小さな(2原子)分子の蛋白分子認識/検知に関する魅力ある研 究について話して頂きました。松本教授との興味深い議論からは,超高速レーザー技術によってプローブされる金属 表面の吸着分子の光化学に関した重要な領域について学ぶ機会を持つことができました。また,他の研究室の見学の 中で特別の原子組成を持つ金ナノ粒子の合成とその特異的な反応特性を紹介され,また,特に印象深かった 920MHz の NMR 装置,そして分子システムが合成され続いて解析されるナノ科学研究室等のツアーは大変楽しいものでした。そ れぞれの研究室を案内して頂いた研究助手の皆さんは,彼らの仕事とその目的の説明に申し分なく務めを果たしてく れました。IMS が多くの科学の領域から助手や共同研究者,そして科学の近い将来のリーダーとなるべき人材を集め ていることは明らかです。

私がコメントしたいもう一つの所見は,先端研究を行う為の IMS の装置群と,独創的で革新的なアイデアを遂行す る研究者の高い質についてです。これらは,IMS が第一級の科学を展開する世界のリーダーとしての位置を保ち続け るための要素と言えるでしょう。しかしながら,この第一級の地位を保ち続ける機会というのは,予算の状況が悪く なったりスタッフの削減などが行われると忽ち損なわれる可能性があります。緊急に,シニアな研究者とともに若い 研究者,助手や学生の数を増やす必要性があります。政府は,研究所の状況が取り返しのつかないものになる前に,こ の耐え難い状況を是正する必要があるでしょう。更に,研究者が個々人の立場で企業と交流し,国の経済を助けるよ うな科学的技術的な新発見を可能にすることは推奨すべき事ではありますが,企業によって支援された応用重視の仕 事が導入され研究所が企業の片腕となるようなことがあれば第一級の科学水準を保ち続けることは出来なくなるでしょ う。そのような事が起こらないように十分に注意しなければなりません。

我々が共に認識しているように,IMS の最も大きなニーズの一つは,より高度な資質をもつ人材を確保することで す。特に重要なことは,科学スタッフメンバーによって指導される大学院生を多く獲得することです。現在の大学院 生が余りにも少ない状況は,アジアの国々から学生を集める新しい日本学術振興会のプログラムの遂行によって変わ るであろうことを知って嬉しく思います。この機会に何人かの能弁なグループリーダーがこれらの国々を回り,直接 に候補者と接触するように直ちに行動する価値があるでしょう。これらの学生を,現在進んでいる刺激的な研究に積 極的に携わらせ,科学の最前線に関わる機会を与えなければなりません。将来性の高い学生たちとの微に行った個人 的な触れあいがあって初めて,最も将来性の高い上質の候補者を選び出すことが出来るのです。

あなた方が明らかに直面しているもう一つの問題は,合衆国のみならず世界のあらゆる所での問題と同様ではあり ますが,これから育ってくる次世代の学生たちが科学の分野に殆ど興味を示していないということです。これに対し ても,積極的なグループリーダーが日本全国の大学の学部や優れた高等学校に出かけて行って,科学の面白さを伝え る「出張サービスプログラム」を開始することも必要でしょう。学校の休み期間に,何人かの研究における教師を含 めて,これらの教員メンバーが結果的に学校と IMS の間の価値ある親善大使となることは大変有用でしょう。

最後に,現在進行していると同時に,これからどのような研究領域が重要になるかとの指摘の要請に応えて,私は

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290 点検評価と課題

次のようなナノスケール物質領域が価値あるものと信じます。それは,1)選択的な反応性を持つ不均一触媒の設計へ の基礎科学の構築と,2)クラスターの集合組織によって必要な特性を有する物質の生成への科学的な概念を構築する ことです。

私の観察と意見が貴方にとって幾ばくかの価値あるものであることを希望します。私の訪問中に,興味深く有益な 情報を与えられ,親しく接して頂いた研究者の皆様に感謝いたします。来年の初冬か晩秋に運営顧問として再び戻っ てくることを楽しみにしています。新しい研究の年度の成功を祈っています。

敬具

A . ウェルフォード キャスルマン、ジュニア エバリー科学特別職

エバン ピュー教授

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